ムダ毛に悩む女性は多く、今や自分またはクリニック・サロンで処理するのが当たり前という時代になりつつあります。
きれいな肌を長持ちさせたい人は「脱毛」を選択することが多いのですが、肌にダメージを与えることもあり、トラブルになることも少なくありません。
ここでは、脱毛の危険性とその原因についてわかりやすく解説し、脱毛のリスクを回避する方法について紹介しています。
脱毛の種類
脱毛したいと思ったとき、まず悩むのが「脱毛の方法」です。

まずは基本的な脱毛方法を紹介しましょう。
脱毛方法 | 内容 | 専門家 による施術 |
自己処理 |
---|---|---|---|
医療レーザー脱毛 | 医療用の高出力レーザーを使用。 永久脱毛が可能。 |
○ (医療機関のみ) |
× |
ニードル脱毛(電気脱毛) | 毛穴に金属の細い針を刺し、微弱な電気を流すことで毛母細胞にダメージを与える。 永久性が高いが時間がかかる。 |
○ | × |
光(レーザー)脱毛 | 光によって毛が生え変わるサイクルを遅くしたり生えなくしたりするもの。 いくつかの種類がある。 痛みが少なく広範囲を処理できる。 |
○ | ○ |
ワックス脱毛 | 液状ワックスを肌に塗布し、固まったところで体毛ごと剥がす方法。 安価。 |
○ | ○ |
シェービング (毛剃り) |
専用のカミソリを使い、体毛を剃る方法。 速攻性があり、最も手軽。 |
○ | ○ |
※ 日本国内の場合
このように、脱毛にはサロンやクリニックなどの専門家だけが行えるものと、自己処理可能なものがあり、中には医師だけが行える施術もあります。
しかし、方法によって生じやすいリスクにも違いがあるため、脱毛したい場所や自分の体質にあった方法を相談し、選択することが大切です。
脱毛で起こる危険性
それでは脱毛による危険性にはどのようなものがあるのでしょうか?
これは「肌トラブル」と「精神的トラブル」の2つに大きく分けられます。
どのようなケースがあるのか、それぞれ見ていきましょう。
肌トラブル

肌のトラブルで多く見られるものは次の6つです。
- 肌荒れ・カミソリ負け
肌が乾燥する、赤くなる、腫れるなどよく見られる症状です。
多くは数日で回復しますが、酷い場合はステロイド薬などの塗り薬が必要になることもあります。 - 炎症・やけど
レーザー・光脱毛するときに発生する熱によって、肌がやけどをした状態です。
軽いものは赤みを帯びる程度ですが、痛みを伴うものもあります。 - 毛嚢炎
ほとんどの脱毛法で起こりやすいトラブルです。
毛穴に入り込んだ細菌に感染したことによってニキビのような炎症が起こった状態です。
自然に治ることが多いですが、痛みを伴う場合や数が多い場合は抗菌薬を服用します。 - 内出血
ニードル脱毛をしたときに挿した針によって、皮膚の内部で出血がおきた状態です。
通常は1週間程度で治ります。 - 皮膚の硬化
レーザー脱毛や光脱毛で起こりやすいトラブルです。
肌が受けたダメージによって、一時的に硬くなったように感じられます。
中には軽度の炎症によって硬化しているように感じる場合もありますが、通常は自然に治ります。 - 色素沈着
カミソリやワックス・テープなどによって皮膚の表面に細かい傷が多数でき、その傷跡が肌を黒ずませて見えるものです。
ニードルや毛抜きによる脱毛法でも内出血などによって色素沈着することがあります。
これらの症状には激しい痛みを伴うものは少ないですが、トラブル改善のために通院するなど時間とお金が必要になってしまうこともあります。
精神的トラブル
脱毛によるダメージは肌だけでなく精神的なものもあります。

よく見られるのは、
- 脱毛による不快感
- 脱毛後の肌トラブルによる不安
で、前者は脱毛の施術中や脱毛後の痛み、後者は肌トラブルによって見た目が悪くなったことへの失望や後悔などがあります。
多くの場合、痛みや外観の悪化は一時的なもので、前項の肌トラブルが回復するにつれ軽減していきます。
しかし、中には後遺症として跡が残ったり、治療を受けなければならなくなったりして精神的なダメージが続くケースも見られます。
後遺症を元通りに戻すことは難しく、後悔してももう遅いという事態もゼロではありません。
また、治療が長引けばそれに掛かる時間も費用も負担となり、精神面に影響することも考えられます。
その場限りの痛み以外にも、ダメージを受ける可能性があることを考慮しておきましょう。
なぜ危険?なぜ起こる?
それではこういったトラブルはどのようにして起こるのでしょうか?
脱毛の対象となる「体毛」は皮膚の毛穴(皮脂腺)の奥にある「毛母細胞」で作られますが、体毛を作るには「毛乳頭」から栄養を受け取ることが必要です。
また、これらを含めた発毛組織は「毛包」と呼ばれ、発毛したあとの通路となって体毛を保護する役割を持っています。
つまり、“脱毛する”ということは、
- 毛母細胞または毛乳頭にダメージを与えて機能させなくする。
- 毛包に保護されている体毛を無理に取り除く。
ことを意味しています。
①の方は発毛器官として機能しなくなるので「永久脱毛」やそれに近い状態、②は次の発毛の準備が整って生えてくるまでの時間を稼げるので体毛のない期間を長くすることができるわけです。
このとき、発毛に関係する細胞だけがダメージを受けたのなら、あまり問題はありません。
しかし、体毛を作る細胞の近くにある他の細胞や組織がダメージを受けると、肌トラブルに発展する可能性が高くなります。
その1つが「皮脂腺」です。
皮脂腺は毛穴に皮脂を分泌して、私たちの肌を乾燥や摩擦などの刺激から守っています。
ところが、脱毛するためにレーザーなどの光や電気による熱で皮脂腺がダメージを受けると正常に皮脂を分泌できなくなるので、脱毛後には肌が乾燥しやすくなってしまうのです。
さらに皮脂腺は肌表面を弱酸性に保つことで、雑菌の繁殖を抑える働きもしています。
私たちの肌には様々な菌が付着していますが、皮脂と一部の菌がバランスよく存在することでバリアの働きをして、皮膚やその内部を外部から守ってくれているわけです。
しかし、皮脂が正常に分泌できないと、このバリア機能も低下し、毛穴の奥へ雑菌の侵入を許し感染してしまいます。
これが「毛嚢炎」です。
毛嚢炎の原因菌はブドウ球菌や真菌(カビ)の仲間であることが多く、通常は私たちの体に悪影響を与える菌ではありません。
ただし、肌のバリア機能や免疫力が低下していると、感染を引き起こしてしまう“日和見菌”の一種です。
肌のバリア機能がいかに大切かがわかりますね。
毛嚢炎は施術後のケアが適切であればある程度防げますが、比較的起こりやすいトラブルの1つです。
特に太い毛が生えている脇やデリケートゾーンは毛穴が大きいため感染しやすく、蒸れるので悪化しやすい部位ですから気を付けましょう。

一方で、脱毛の物理的・化学的刺激が肌に悪影響を及ぼすケースもあります。
これには、
- レーザーなどの光や電気の熱によるやけど
- ワックスや除毛クリームなどの薬品類による肌荒れ・炎症
があります。
どちらも赤みを帯びる軽度であればきれいに回復しますが、やけどは跡が残る可能性があり、肌荒れ・炎症はステロイド治療が必要になったり、ステロイドによる副作用が出たりすることも考えられます。
また、これらの傷が狭い範囲に多数できることで肌が黒ずんで見える色素沈着をおこすこともあります。
脱毛は決して危険なものではありませんが、絶対に安全と言い切れないことも理解しておくことが必要です。
リスクを回避するための注意とは?
脱毛によって生じるこれらのリスクには、注意することで回避できるものがあります。
脱毛する前後でできることもあるので、知っておくと良いでしょう。
①脱毛するタイミングを選ぶ

肌の状態はホルモン…特にエストロゲンの影響を強く受けています。
エストロゲンは生理周期を左右する女性ホルモンの1つですが、減少する生理前後は肌トラブルが起こりやすい時期です。
生理が近づくと肌荒れやニキビができるといった経験のある女性は多いことでしょう。
この時期に脱毛によるダメージを肌に与えることは、肌トラブルのリスクを高めることになります。
さらに生理前後は精神的にも不安定な時期なので、脱毛の痛みにも過敏に反応してしまう人もいます。
また、日焼けも肌が炎症を起こしている状態なので、通常よりもデリケートになっています。
このような理由から、生理前後や日焼けしているときは脱毛のタイミングとして適切ではありません。
時期をずらして行うようにしましょう。
②適正な機器を適正に使う
特に脱毛を自分で行う場合、自分に合った器具を選び、正しく使うことが原則です。
例えば、かなり日焼けした状態やもともとの肌が黒っぽい人は、レーザー脱毛などは向いていません。
レーザー脱毛は黒い色素に反応するので、体毛だけでなく皮膚表面の色素も熱してしまい、やけどする可能性があるからです。
また、最も簡単なカミソリで剃る方法をとったとしても、頻繁に行えば肌の表面は傷つきますし、その状態で強い日差しに当たれば炎症を起こすこともあります。
器具が不衛生であれば、化膿したり毛嚢炎になったりするリスクも上がります。
患部も器具も清潔に保ち、説明書に従って取り扱いましょう。
なお、日本で許可されていない脱毛器具を海外から取り寄せて使うことは避けた方が無難です。
日本の規格に合ったものを使うようにしましょう。
③必ず清潔に保ち、保湿する
どんな施術の場合でも、肌のバリア機能の低下を補うために保湿を心掛けることが大切です。
肌が過敏な状態になっていますから、できるだけ低刺激の保湿剤を使用する方が安心です。
毛嚢炎を起こしている場合は患部を清潔にしたうえで保湿するようにしましょう。
汗などはこまめに洗い流す方が早く治ります。
気になるからと言って潰すのは逆効果であるばかりでなく、悪化させる原因にもなりますから、絶対に止めましょう。
④炎症はよく冷やす
肌トラブルの多くは軽度のやけどのような熱による炎症や毛嚢炎などの細菌感染による炎症です。
特にレーザーなどの光脱毛やニードル脱毛を受けた直後は熱によるダメージを受けていますから、よく冷やすことが大切です。
専門家の施術を受けた場合はすぐに冷やしてくれますが、帰宅後もほてりを感じるようなら継続的に冷やし続けましょう。
流水で冷やすのが一番ですが、難しい場合は氷嚢を使うか、ジップロックに氷水を入れてタオルで包み、患部を冷やすことをおすすめします。

熱さまし用の冷却ジェルを貼る人がいますが、これは体感的に冷たいだけで肌の熱をとる効果はありませんから止めましょう。
ただし、炎症が酷い・改善が見られないといった場合は速やかに皮膚科を受診してください。
症状によっては化膿止めの飲み薬を処方してもらえるので、悪化を防ぐことができます。
⑤施術者を正しく選ぶ
脱毛の多くは医療行為ではありませんが、人体に施術するという意味ではそれに準じたものともいえます。
使用する器具も施術者の資格や技術によって変わりますし、脱毛後の状態にも大きく影響してきます。
つまり、どこで(誰に)脱毛してもらうかが重要ということです。
例えば、医者がいるクリニックでは医療用の高出力レーザーを使用することができるので、永久脱毛が可能ですが、エステサロンなどが使用するレーザーはこれよりも低出力なので、繰り返しの施術が必要なこともあります。
また、優れた施術者がいれば、同じ機器を用いても高い効果を得られることもあります。
反対に、作業性を優先するあまり、適切でない出力で脱毛し、トラブルを起こす悪質な店も見られます。
このように脱毛するにあたっては、良いクリニックやサロンを探すことがリスク回避につながると言えるのです。
施術面だけでなく、カウンセリングやアフターフォローが充実していることも、大切なチェックポイントです。
価格やキャッチコピーだけでなく、施設やサービス、口コミなどの情報をきちんと調べてから選ぶようにしましょう。
まとめ
肌を美しく見せる脱毛は、女性にとって大切なスキンケアの1つです。
しかし、適切な方法とケアをしなければリスクを負う可能性もゼロではありません。
必要以上に恐れることはありませんが、万が一を考えてリスクの少ない自分に合った方法で美しさを保つようにしましょう。